令和2年度 秋季研究発表会プログラム

日時: 2020年11月28日13:50-16:00
場所:オンライン開催
方法:Zoom
→■参加申込はこちらから■11/24(火)申込締切
・ 今回は個人会員、団体会員、賛助会員のみ参加可能です。
・ 参加方法を記したメールをお申込みの方にご送付いたしました ( 11/25追記) 。
遅延した参加申込み、および当日の参加申込みには原則応じることができません。ご了承ください。

13:00 開設(Zoom入室可)
13:50 諸注意
13:55 開式の言葉、会長挨拶
  (研究発表会)
14:00-14:30 発表(1)
14:30-15:00 発表(2)
15:00-15:30 発表(3)
15:30-16:00 追加質疑応答
16:00  閉会の言葉

14:00-14:30 発表(1)
遠隔社会時代における公立図書館の諸要素についての検討
坂本俊(安田女子大学文学部日本文学科)

 これまで、図書館という存在は記録及び記録資源を保管し、必要に応じて提供するという知識・情報の保管庫の役割を担っており、これら図書館の基本的機能として、保存と利用の両面を備え、それらを確実に提供することができる環境を構築することが求められてきた。しかし、社会教育・情報提供機関として役割を求められる公立図書館においては、貸出し中心の図書館サービスへとサービス方針を変更して以来、保存よりも利用機能を重視する傾向高まり、利用優位となる図書館づくりがおこなわれてきた。

 また、我々の社会生活において、情報通信インフラが整備され、電子コンテンツが台頭したことにより、物理資源を基礎資源とする図書館モデルが崩れ、電子図書館、ハイブリットライブラリーへの転換という形で、電子コンテンツを活用した遠隔型図書館への移行および非来館サービスの拡充が進められてきている傾向が見られる。図書館の機能・サービスが遠隔化の方向へと進展している一方で、「場所としての図書館」といった概念を基礎とし、図書館に来館することで得られる体験に価値づける新たな図書館モデルも支持されてきている。

 このような図書館では、図書館の基本機能を遠隔化し、それに加えて滞在型施設として来館利用に単なる資源利用以上の付加価値を与え、より良い利用体験を提供することで、図書館の社会的価値を向上させることを目的としているが、昨今の急激な社会体制の変化に即し、遠隔社会化へと転換せざるを得ない現状況下において、従来通りの利用者を集めることを目的とする参集型図書館を引きずっている図書館モデルを今後も公立図書館の基本モデルとすることには疑問が生じる。

 このため、本発表においては公立図書館に求められる機能要件を軸として、市民の情報源たる公立図書館が今後も公的社会機関として将来的にも支持されるための要素とはどのようなものであるかについて検討することとしたい。

14:30-15:00 発表(2)
「公立図書館における「有害図書類」の取扱いについて
 ―テキストマイニングの手法を用いた自由記述の分析―」
安光裕子(山口県立大学国際文化学部 )
藪本知二(山口県立大学社会福祉学部 )

 昨年(2019年),全国の公立図書館(都道府県立・市区立)において「有害図書類」がどのように取り扱われているかを明らかにする目的でアンケート調査を実施した。これまで,この調査の結果をもとに,青少年健全育成条例に基づく有害図書類規制制度が公立図書館の「有害図書類」の収集および提供(閲覧・貸出)に及ぼしている影響について,本学会の2019年度秋季研究発表会において報告し,論文にまとめた(『図書館学』116号(2020年3月))。

 また,自館が選書の上所蔵している図書類を,有害指定を理由に,将来にわたり青少年はもとより大人に対しても提供する(青少年・大人にとっては利用する)機会を閉ざす除籍・廃棄について,論文にまとめて発表した(『図書館学』117号(2020年9月))。

 このたびの研究発表会では,有害指定を受けた図書類に対する公立図書館の態度に焦点をあわせる。そのために,「有害図書類」の取扱い(青少年・大人への提供や除籍・廃棄のあり方)や図書館の自由に関する宣言の位置づけなどによって公立図書館を分類したうえで,「公立図書館は,条例に基づき指定を受けた「有害図書類」をどのように取り扱ったらよいか」との問いに対する自由記述による回答について,テキストマイニングの手法を用いて分析し,記述内容にどのような相違があるかを検討する。研究発表会では,その結果を報告する。

15:00-15:30  発表(3)
鹿児島県立図書館奄美分館長・島尾敏雄における“地方奉仕”
:昭和30~50年代に着目して
工藤邦彦(別府大学文学部司書課程 )

 本発表では,戦後の地方図書館史における県立図書館分館の実践を掘り起こすことを目的に,鹿児島県立図書館奄美分館長・島尾敏雄の就任期(昭和33(1958)年4月~50(1975)年4月)を中心に展開した奄美群島における“地方奉仕”のあゆみを考察する.加えて,島尾分館長退任後の“地方奉仕”に準じた市町村の読書網形成を確認する.

 “地方奉仕”については,昭和39(1964)年10月,日本図書館協会刊行の調査報告書である『小図書館の運営』に「鹿児島県立図書館地方奉仕課を模範とすべき」旨の記載がみられる.“地方奉仕”とは,①鹿児島県立図書館および奄美分館における市町村を対象とした貸出文庫の整備,②貸出文庫による配本図書の団体貸出促進を目的とした集落の親子,婦人層対象の読書グループ創成の二点を指す.とりわけ①は,佐野友三郎山口県立山口図書館長曰く「将来不動の図書館を設立」するための基礎的な活動であり,最終目標を地域における図書館の設置に据えていた.島尾も同様に昭和41(1966)年,分館報『島の根』で奄美群島の市町村における中央公民館図書室の整備にあたり「すべての人々が図書館サービスの恩恵が受けられるよう,ゆくゆくは地域図書館への発展を目指しサービス活動を進める」と公表した.

 本研究で奄美分館の“地方奉仕”を時系列に考察した結果,明らかになった点は以下のとおりである.①昭和30~40年代前半には,貸出文庫の整備によって市町村の公民館図書室の機能強化が図られた.②昭和40年代後半から島尾分館長退任直後の50年代前半にかけ,市町村に向けた読書普及活動に力点が置かれた.③昭和50年代後半以降,一部の町村で独自の貸出文庫設置,読書グループの創成がみられた.③の事例として,沖永良部島知名町では中央公民館図書室を起点に集落への巡回文庫の整備,生活改善活動の一環として自主的に結成した婦人層による読書グループの活動,小学校区での「朝読み放送」の実施を確認した.

 以上から,奄美群島では島尾分館長就任期からの“地方奉仕”を契機に市町村の公民館図書室を起点に集落や小学校区の読書活動が進展したと考えられる.このことが後年の奄美群島の町村における“小図書館”設置の環境醸成へとつながったものと推測される.

15:30-16:00 追加質問

令和2年度秋季研究発表会実行委員会
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