総会・研究発表会プログラムはこちら

研究発表会(オンライン) 10:30-11:40

10:35-11:05 発表(1)司書のドラマトゥルギーー「トゥアラストラ」ラクダ期司書ー / 宍道勉

図書館は開かれた舞台であり、情報と人間(司書と市民・子どもたち)の物語(ドラマ)を展開する、本論は司書の目線でその全容を紹介する。

①舞台と背景
図書館は静寂な雰囲気の空間ですが、知の深淵であり、常に司書や利用者が情報を求めて動き回るダイナミックな場である。今回は信用金庫から図書館の舞台を移動する。
②司書の役割
司書は、単に本を管理するだけではなく、利用者と共に、求める情報を「探求」する物語の演出家である。
図書館利用者が「知りたい」という欲望(問い)を抱える役者となり、演出家の司書の元で、小道具となる「本=情報」と出会うプロセスの台本を書き、舞台上で演技する。
③今回は筆者がニーチェ「トゥアラストラ」ラクダ期の信用金庫の幕から桃山学院大学司書講習会に潜み、奈良県立医科大学附属図書館募集を受験し合格することで図書館に舞台を移し、また6年後に鳥取大学附属図書館医学部分館に移動するが、そこの舞台に登場する人物、本、歴史がドラマを展開する。

(幕間1)奈良県立医科大学附属図書館
−1 図書館には対話が重要と知る
−2 資料(小道具)との出会い
−3 利用者、対一人との出会い(対話)
−4 司書第2期への異動
(幕間2)鳥取大学附属図書館医学部分館
−1 閲覧係が活動舞台となる(1974)
−2 検索教育講義演習(1975)
−3 図書館の利用者教育の理論化(1976)
−4 鳥取大学教育学部司書教諭課程非常勤講師(1975)
この任務を拝命してから司書教諭を考える本との出会い得た(1980)
−5 Doris Rushtonの「How to use a library」との出会い
−6 東京大学図書館情報学セミナー参加(1983)
−7 「第5回国際医学図書館会議(5th International Congress on Medical Librarianship)参加(1985)
イタリアの図書館司書Valentina Comba氏との出会い
−8 イタリアの図書館見学(1994)
−9 イタリアを学ぶ
−終幕 司書役を降りる

11:10-11:40 発表(2)教職協働による卒業論文制作支援授業の実践と改善:「学修カード」の分析を通して / 工藤彩(久留米大学御井図書館)

 発表では、久留米大学文学部情報社会学科において、2021年度より学科教員と図書館職員が教職協働で実施している授業科目「卒業論文制作実習演習」の実践を取り上げる。本授業は、4年次後期の卒業論文完成期に、文献引用、書誌情報、参考文献リストの作成、研究倫理の遵守等について、学科教員と図書館職員が連携して指導を行うものである。

 近年、大学教育においては「出口における質保証」の充実が求められており、卒業論文・卒業研究は学位プログラムの集大成として重要な役割を担っている。一方で、大学図書館が行う学修支援は、初年次教育やアカデミック・ライティング支援に重点が置かれることが多く、卒業論文制作段階における体系的な支援については、十分に検討されているとは言い難い。

 情報社会学科では、卒業論文制作において、引用や書誌情報の記述、参考文献リストの作成等に課題が見られたことから、卒業論文完成期における実践的な支援として本授業を開設してきた。2025年度は、2024年度までの実践を踏まえ、指導内容を段階的に整理し、学生の進捗状況を可視化するために、新たに「学修カード」を用いた進捗管理を導入した。

 本発表では、2025年度に「卒業論文制作実習演習」を受講した学生の「学修カード」を分析し、教職協働による卒業論文制作支援の実践を振り返るとともに、2026年度以降の授業改善に向けた課題を検討する。

研究発表会(対面) 

13:45-14:15 発表(3)1930年代の日本図書館協会による良書普及事業の展開 / 仲村 拓真(山口県立大学)

 本研究の目的は,日本図書館協会が1930年代に実施した良書普及事業の特徴を明らかにすることである。

 日本図書館協会の良書普及事業は,1931年から,文部省の援助を得て,良書調査委員会を発足させ,雑誌などを通じて,図書の推薦を行ったものである。推薦文は,日本図書館協会の『図書館雑誌』や,文部省関係者による社会教育会が刊行した『社会教育』によって周知された。また,日本図書館協会では,毎年,推薦文をまとめて,『良書百選』を刊行し,図書館等に頒布した。そのほか,誌上による読書相談も試みられた。

 日本図書館協会が良書普及事業を展開したことは,これまで,多くの文献で言及されてきた。しかし,既存の研究では,事業が実施されたことや,雑誌に関連記事が掲載されたことを指摘するにとどまり,その内容は精査されてきていない。

 良書普及事業は,日本図書館協会が図書館界に与えた影響を適切に検討するうえで,看過できないものである。そこで,本研究では,良書普及事業の展開に着目し,その特徴を考察する。具体的には,(1)良書普及事業はどのような経緯で展開されたか,(2)どのような図書が取り上げられたか,(3)どのような読書相談が掲載されたか,の3点を研究課題として,分析を行う。

 本研究は,文献研究である。具体的には,日本図書館協会による『図書館雑誌』の「本協会推薦図書」欄や『良書百選』,社会教育会が刊行した『社会教育』の附録であった「読書」を主な史料として,事業の経緯や推薦の内容を確認することで,良書普及事業の展開を詳らかにする。

14:20-14:50 発表(4)高等学校国語科(現代の国語)における表現力の育成と読書推進~年間2回のビブリオバトルの実践を通して~ / 上釜 千佳・秋山 綾香(鹿児島高等学校)

 発表者が勤務する鹿児島高等学校では、表現力の育成と読書意欲の向上を目的として、情報ビジネス科1年生を対象に年間2回のビブリオバトルを実施した。第1回目(1学期)の実施については本学会誌『図書館学No,128』にて報告している。本発表では第2回目(3学期)の実践報告を中心におこなっていく。実施方法は、1回目同様に、各クラスでのグループ予選大会、グループの代表者による決勝大会、各クラスの代表者による学科全体でのビブリオバトルという構成でおこなった。1回目のビブリオバトルでは、生徒自身の課題として発表時間を使い切れないという意見が多く見られたため、2回目では学校図書館の活用を含め、読書時間や原稿作成のための準備時間を確保するなど、いくつかの改善を図った。

 ビブリオバトルとは、発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まり、5分間で本の紹介をおこない、ディスカッションを2~3分でおこなったあと、読みたいと思った本に投票し、最多票を集めたものをチャンプ本とするもので、京都の大学の研究室で始まったのがきっかけである[i]が、現在、小・中・高校といった教育現場でも広くおこなわれている。本校でも高校生に合わせて一部ルールを調整して実施した。

 本発表では、2回の実践を通してビブリオバトルが表現力の育成に効果をもたらしたのか、生徒の読書意欲を促進したのかについて、振り返りシートの分析をもとに成果と課題を検討し、ビブリオバトルの教育的有効性について考察する。

 

14:55-15:25 発表(5)国語辞典における【としょかん図書館】の語釈について / 奥村治輝(活水女子大学図書館)

 多くの出版社が刊行している国語辞典に収録されている見出し語【としょかん図書館】について、それぞれの語釈を調査した。

 調査対象は6社9点の小・中型国語辞典の最新版から過去3版分の語釈とした。また比較対象として類縁機関である博物館および美術館の語釈についても調べた。

各辞書の【としょかん図書館】の語釈は類似しており、これらをとりまとめると「図書、その他資料を収集、整理、保管し、一般の利用に供する施設」という表現である。

 これは、“この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。”と定義した図書館法第2条を根拠にしていると考える。そう考える理由は、各辞書の【はくぶつかん博物館】の語釈が【図書館】の語釈と同様に、博物館法第2条に定める定義を根拠にしていると思う表現だったからである。なお、図書館や博物館のような法による定義がないのが原因かどうかは不明だが、【美術館】という見出し語が存在しない辞書も複数あった。

 図書館に関する提言や表明である『地域の情報ハブとしての図書館』(2005年1月)、『これからの図書館像』(2006年3月)、『IFLA-UNESCO公共図書館宣言2022』(2022年7月)などに示された、地域の情報拠点、課題解決の支援、レファレンスサービスの充実、ICT活用や他機関と連携した図書館サービス、多様なニーズや地域振興へのサービスなどについてふれた記述はどの国語辞典の【図書館】の語釈にもない。「一般の利用に供する」という文言がこれらの多様な図書館サービスを含有すると強引に捉えることもできるが、「閲覧や貸出をする」施設と表現する辞書が複数あることが現状である。

 『これからの図書館像』から20年経過したが、図書館が実践してきたサービスはどれくらい社会に認知されているのか。国語辞典の【図書館】の語釈を世間一般の図書館に対するイメージととらえ、この現実を共有したい。

15:40-16:10 発表(6)鹿児島県における草創期の図書館 / 濵田 みゆき(鹿児島国際大学)

 本発表では、鹿児島県における図書館の始まりについて各種の資料を基にひも解いていきたいと考える。1872(明治5)年、文部省により、日本初の近代的図書館として書籍館が湯島聖堂内に開設された。この国立の図書館が日本における最初の近代的図書館ということになるだろう。一方、鹿児島県の図書館の歩みは私立図書館が先行していた。

鹿児島県において図書館が設立された背景については、これまでも考察してきたが、県内各地域の図書館設置の事情や鹿児島県の地域による特性などを郷土資料等も参考としてさらに詳しく検証したい。

 私立図書館である根占書籍館に始まった草創期における鹿児島県の図書館について、『文部省年報』、『大日本帝國文部省年報』、『全国図書館に関する調査―大正10年3月現在―』等を中心として分析していく。また、当時の国の法令や施策など動きについても合わせて確認し、考察したいと考える。

 加えて、佐野友三郎が始めた巡回文庫についても、山口県との比較検証を行いたいと考えている。巡回文庫は鹿児島県においても進められてきた図書館活動であるが、山口県の巡回文庫の実態と比較することにより、鹿児島県における草創期の図書館の特色を考察したい。

16:15-16:45 発表(7)台湾の統一採用試験問題に見る図書館員に求められる能力とレベル / 岡田 大輔(尚絅大学)

[目的] 学生にどのような力を身につけさせるかという目標を明確にすることは、教育の質を保証する上で重要である。また、採用試験などのテスト形式は、目標が具体的に可視化されている。本研究では、台湾における図書館員の公務員試験の問題から、日本の司書課程教育・図書館情報学教育への示唆を得ることを目的とする。

台湾の大学では、図書館情報学を専攻する学科が比較的多く設置されている。また、正規職の採用試験は公共・国立・大学図書館の共通で行われる。

[方法] 正規職の採用試験は上級職と中級職が別に行われ、試験科目はやや異なる。図書館情報学に関する科目を対象とし、公式webページにて公開されている過去5年間の問題を収集した。問題文は中国語であるため、web翻訳ツールを用いるとともに、必要に応じて専門用語などはwebを用いて意味を確認した。

収集した問題は日本の司書課程のカリキュラムの項目ごとに分類し、出題範囲・内容を分析した。

[結果] 選択式の問題だけではなく、記述式の問題も出題される。

選択式の問題は、図書館学の5法則・ブラッドフォードの法則・中文圖書分類法・Big Six Skills・ラーニングコモンズ・インパクトファクター・ビックデータ・ブロックチェーンなど幅広く出題される。大学図書館に関しても出題されることが分かる。国家基準から必要な蔵書冊数と年間増加冊数を求める問題も出される。

記述式の問題は、「FRBRとは何か?文学作品のWEMIの例を挙げなさい」「T.D.ウィルソンの情報探索行動のモデルの要素と要点を説明しなさい」といった知識や理論を問う問題から、「問題利用者にどのように対応するか」といった現場での対応を問う問題まで幅広く出題される。また「Data visualizationとは何か」「図書館がChatGPTを活用して読書指導や図書館運営をどのように支援できるか」「公共図書館はどのような多文化サービスを提供すべきか」のような時代に合わせた問題も出される。

試験のレベルは日本の司書課程に比べ大幅に高い。また、論述式の問題は大学で授業を受けるだけでは対応できず十分な試験対策が求められ、図書館情報学の能力以外が大きく左右すると考えられる。

[結論] 情報科学と図書館学のバランスや、シチュエーションを設定した問題などは、日本の司書課程の教育にも有用であると考えられる。

16:50-17:20 発表(8)熊本CIE図書館について / 岩瀬 彰利(九州龍谷短期大学図書館)

 占領期において、GHQ/SCAPのCIE(民間情報教育局)は全国に23か所のCIE図書館を設置した。その一つとして、熊本県では熊本市に熊本CIE図書館が全国16番目の施設として1948年10月1日に開設された。同館は、開架式による図書の提供、レファレンスサービス、相互貸借など、アメリカ式図書館サービスを導入・実施した。また、熊本・宮崎・鹿児島の3県をサービス対象地域とし、分館の設置を通じて、戦後の混乱期における南九州地域の図書館サービスの充実に寄与した。

 しかしながら、多くの市民に利用された同館も、日本が主権を回復した1952年5月7日に熊本アメリカ文化センターへと改称され、運営主体はアメリカ国務省へ移行した。

 本発表では、占領期における熊本CIE図書館の所在地、蔵書構成、および実施されていた図書館サービスの実態について検討する。さらに、熊本市立図書館に引き継がれた旧蔵書の調査を行い、その結果について報告する。

17:25-17:55 発表(9)スマートシニアのライフリニューアル:職業能力(再)開発の観点からの職業訓練校、ファブラボと公共図書館のメーカースペースとの比較などを含めて / 山本 順一

 先般、ことしの2月19日の夕方、福岡市立図書館で発生した殺人未遂事件に関連して、とある雑誌の連載に考えるところを執筆した(拙稿「公共図書館には(社会)教育、福祉、心身の健康の維持増進機能に加え、人間性回復の矯正機能とその予防・防止機能の一端をも担わせるべきだ」『みんなの図書館』2026年7月号)。そこでハタと気がついた。「だれでもいいから、殺したい」という無差別殺人については、法務省法務総合研究所の紀要などには研究成果が示されているが、そこまで追い込まれた、孤独で仕事もなく、不幸な貧困の窮地に置かれた人物を救おうという仕組みは、この日本にはほとんど見当たらない。生活と資金に余裕のある社会階層を相手にするのは、バカバカしいので、ここではやめる。ふつうの中下層に属するヒトたちが生きていくためには、食費と家賃はまず不可避。そのためには、賃金労働を余儀なくされ、その職業に従事するには知識とスキル、職業能力が求められる。今回の発表においては、その職業能力の基盤と応用に関して、アメリカの公共図書館を横目で睨みながら、日本のみじめな公共図書館の実態を考え、こうあればいいなと思う方向の一端を示したい。

 福岡市立図書館の容疑者は61歳男性。高齢の人びとが退職後、離職後、あらためて仕事を継続しようというとき、シルバー人材センターで教えてくれる仕事、清掃、植木剪定、チラシ配布、駐車・駐輪場管理、家庭の家事援助、簡単な臨時的・短期的・軽易な業務なども収入を得るには大切であろうが、そこそこの学歴と能力を備えた多くのスマートシニアにとっては、バカにするなと言いたくもなるであろう。よく言われることであるが、アメリカではひとつの仕事を終え、高齢になってからメディカルスクールに入学、精神医学の医師になる。人生にギブアップはない。ネヴァーギブアップで新しい仕事に就くという行き方がある。おおむね30歳前後で専門職教育の適格性を社会的に奪ってしまうという日本の制度は誤っている、とわたしは思う。アメリカでネヴァーギブアップを支える仕組みのひとつがパブリックライブラリーである。人生100年時代の職業能力開発は、職業能力開発校を含む日本の学校制度や現代の口入れ屋、人材派遣業などでは、もう間に合わないはずだ。

総会・研究発表会プログラムはこちら