令和3年度(2021年度)西日本図書館学会秋季研究発表会

日 時:2021年12月4日(土) 13:30~17:00

場 所:山口県立大学C546(北キャンパス3号館5階)

対面とオンライン(ZOOM)との併用開催

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【発表要旨】

13:40 – 14:10 研究発表(1)

「卒業論文における引用文献の実態把握の試み‐オンライン情報源に着目して‐」

工藤 彩(久留米大学御井図書館)

 学術論文で他人の文章やデータを引用した際は、引用したすべての図書やデータなどの出典を明示しなければならない。論文中での引用の方法や出典の書き方は専門分野で多少の相違はあるものの、引用文献には、著者名、書名、出版者、出版年、ページ数などの書誌データの記載が必要である。電子メディアによってのみ作成されるウェブサイトに掲載される情報を引用する場合も、紙媒体と同様にウェブページのURL、ウェブサイト名、作成時期などを明示する必要がある。しかし、ウェブサイトに掲載される情報は、更新や削除が頻繁に行われ、ウェブページの著者名、作成時期、更新年月などが不明な場合も多く、書誌データの取り扱いに迷うことがある。
 学生がレポートや論文を作成する際、どのような文献を情報源とし、どのように出典を明示しているのか。特に、インターネットを通じて入手したオンライン情報源について、どのように書誌データを記録しているか。
 本発表では、学部学生の引用文献の実態を把握するため、卒業論文要旨集に記載された引用文献を分析した。引用文献の基準として、日本社会学会の『社会学評論スタイルガイド 第3版』(2018)を使用した。引用文献の資料種別、入手方法、特にオンライン情報源に着目し、その書誌データの特徴や課題を整理し報告する。

14:10 – 14:40 研究発表(2)

「国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」の第二次試験(面接試験)」

大庭一郎(筑波大学 図書館情報メディア系)

 2004(平成16)年の国立大学法人化にともなって、国立大学の職員採用試験が従来の国家公務員試験の適用外となったため、人事院が実施する国家公務員採用Ⅱ種試験「図書館学」が廃止された。その結果、国立大学法人等職員統一採用試験が開始され、図書館職員の採用は、「事務系」の図書という区分で行われるようになった。この試験は、全国7地区(北海道、東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州)の各実施委員会が行い、採用も地区ごとに行われている。国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」の試験方法は、第一次試験で教養試験(多肢選択式)を行い,第二次試験で図書系専門試験(筆記試験)と面接考査等が実施されている。国立大学の法人化から17年経過し、国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」は、安定運用の段階に入ってきた。ただし、計18回の試験結果によれば、各地区の第一次試験合格者に対する採用予定人数が少ないため、図書系専門試験(筆記試験)の成績だけでなく、面接考査等の比重が高まっている。
 そこで、本研究では、国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」に関する基礎研究の一環として、第二次試験の面接試験を対象として、国立大学法人の面接調査票を網羅的に収集し、採用面接時に国立大学法人の図書館職員に問われる適性・能力について分析・考察した。

14:40 – 15:10 研究発表(3)

「久留島武彦と図書館」

須永和之(國學院大學)

 明治7(1874)年、大分県玖珠郡森町に生まれた久留島武彦は、巌谷小波とともに口演童話会を主催して、日本全国の子どもに童話を語り聞かせた。
 明治41(1908)年、朝日新聞社主催の世界一周欧米視察団に通訳として参加し、米国の通俗教育(社会教育)について見聞を広めた。明治44(1911)年、文部省の交付を受けて米国の図書館、博物館、動物園などの社会教育施設の視察旅行をした。その視察旅行の報告として「米國に於ける通俗教育の状況」、講演録として「図書館と動物園と博物館との社会的組織」を残している。これらの著作からは米国の図書館を模範とした図書館活動に関する考察が見られ、大正期から昭和初期の日本の図書館活動へ影響を与えたと考えられる。
 久留島武彦は明治40年代から大正初期にかけて東京の四谷にある西念寺の子ども会で口演童話を行っている。西念寺では住職の西島義豊氏により私設の児童図書館が開設されていた。また、西念寺に隣接した武家屋敷で生まれた山中共古(笑)は日本の民俗学の先駆者であるが、その晩年、青山学院大学の図書館司書を務めた。山中共古は東京帝国大学の坪井正五郎が創設した集古会の会員であり、久留島武彦も集古会の会員の一部が主催した、人形玩具を愛好する集会、大供会に参加した。山中共古と久留島武彦は接点がある。
 本研究は文献調査から久留島武彦が米国視察で得られた社会教育施設しての図書館像が大正期の日本の図書館活動に与えた影響を考察する。

15:10 – 15:40 休憩

15:40 – 16:10 研究発表(4)

「教育・研究目的の著作物利用に対してなぜ補償金が必要なのか?」

山本順一(放送大学)

 ことし(2021年)5月、またもやこの国の著作権法が改正された。学校や図書館に関係する著作権法31条、35条も改正された。2019年に中国の武漢からはじまったCOVID-19パンデミック。世界の社会経済活動は見事に麻痺し、学校は休校、図書館は休館、児童生徒学生に対する教室での対面授業や図書館の通常の来館利用は困難となった。2年経過した現在もまだ旧に復することはない。こうした状況を背景として、教育・研究活動における著作物のデジタル、オンライン利用について、児童生徒学生、そして一般市民の便宜を充分に配慮した著作権法改正だと喧伝されている。ほんとうにそうだろうか?
 図書館を対象とする著作権法31条は国立国会図書館が所蔵し、デジタル化している絶版等資料について、市民が直接その一部をオンラインで利用できることになった。また、最寄りの公共図書館等に所蔵されている資料をデジタルコピーしたものを当該図書館がメールで送信してくれるようになるという。学校を対象とする著作権法35条は、教師が児童生徒学生に対して、インターネットを利用して、オンデマンドも含む反転学習、予習復習、課題提供のために著作物を利用できるという。
 しかし、これらの法改正で権利者側に補償金支払いが義務付けられた。アメリカ連邦著作権法のもとでは、このような著作物利用については一定の要件をクリアすれば自由に無償で行うことができる。今回の日本の著作権法改正のおかしさについて一緒に考えることにしたい。

16:10 – 16:40 研究発表(5)

「図書館即興劇論」

宍道 勉((鳥取大学非常勤講師)

1.即興劇とは
 司書が脚本を企画し,利用者(役者)利用(演技)を演出することをいう
1)誰が
 全ての即興劇で.演出は司書が行い,演技は利用者(役者)が行う
2)何を
 「本と出会う」即興劇は演出家(司書)から役者(利用者)が図書館を学ぶ
3)どのように
 司書(演出家)が自分でデザインした即興劇の脚本で,利用者(役者)の演技を演出する
4)なぜ
 司書は図書館の教育者であることを実証する
 従来の読書指導は「教育」に重点を置くので利用者は消極的になりがちである
5)いつ
 特別な指導時間を設けるまでもなく,利用者がいて開館中であればいつでも時開催できる
6)どこで
 図書館の大小を問わない(本のあるところ)ので学校図書館も対象となる
2.きっかけ
1)今沢慈海「図書館は市民の大学なり」の再考
 図書館(市民の大学)が即興劇の舞台となり,それを知る司書が主催するに相応しい
 市民の市民による市民のための図書館への第一歩
2)図書館は社会・文化の中心
 静から動へ
 利用者の消極性を積極性へと変える
 開かれた(自由)図書館(利用規則の見直し)へ
3.司書の役割
1)サービス担当から教育(指導)者へ
2)教育はアート(即興劇)であり,司書は主催するアーティストである
3)観客(利用者)を図書館(舞台)の役者に誘う
4.図書館をめぐる人間関係
1)即興劇による利用者と司書とのコミュニケーション再構成
 公共図書館は司書と市民の関係
 学校図書館は学校司書と児童生徒との関係
2)「本を読む」場から「本との出会う」場へ
5.「即興劇」紹介
①しりとりブックトーク
②レファレンスごっこ
③どんぐりとヤマネコ裁判
④注文の多い図書館
⑤私の読みたい本を選んで
⑥反対語で本を選ぶ
⑦どの本を読みますか
⑧おしゃべりブックトーク
⑨新聞コラムをブックトーク
⑩セロ弾きのゴーシュはどうして上手くなったの
⑪時間どろぼうをどうしよう
⑫本を演奏する楽団
⑬なぞなぞブックトーク
⑭星の王子さまが星めぐり
⑮ドン・キホーテの「得意道」本選び
6.本論のまとめ
独自性を持つ(他との違いを追求する)図書館を目指す

16:40  閉会の挨拶

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 【申し込み】

個人会員,団体会員,賛助会員のみ参加可能です。

参加のご返事は,氏名,所属,連絡先,対面または遠隔(ZOOM)のいずれかを明記するとともに,件名に「秋季研究発表会参加申込」と記載のうえ,11月29日(月)までに,山口県支部事務局にメール(yasumitsu@fis.ypu.jp)にてお送りください。

遠隔(ZOOM)希望の方には,後日,ログインID,パスワードをお送りいたします。

なお,発表者の要綱は,11月30日(火)以降に本学会ホームページに掲載します。

今後追加される「お知らせ」は,学会ホームページ,もしくはニューズレターをご覧ください。

【山口県支部事務局】

〒753-0021   山口市桜畠6-2-1

山口県立大学国際文化学部  安光 裕子

TEL&FAX  (083)929-6242

E-mail  yasumitsu@fis.ypu.jp